表参道で五感を揺さぶる、櫻井焙茶研究所の極上日本茶カクテル体験
sakurai japanese tea experience は、茶を喉の渇きを潤すだけの日常品から、五感で味わい尽くす生きた文化へと押し戻した。東京・南青山の交差点から目と鼻の先、商業文化施設スパイラル(青山)の5階へと足を踏み入れると、街の喧噪はガラス戸の向こうで不意に途切れる。現れるのは、無駄を削ぎ落とした金属と木が織りなす空間。白衣のような所作着に身を包んだ茶司たちが、無言のまま手元の茶葉を見つめ、静かに湯気を立ち上らせている。
日本全国の茶農家を巡り歩いた店主が差し出す一杯を求めて、いまや世界中から旅人が集まる。このsakurai japanese tea experienceが放つ独特の緊張感と温かみは、いわゆる伝統的な茶室の堅苦しさとも、今風のカジュアルなカフェとも全く異なる。玉露の濃厚な滴を舌先に乗せた瞬間、固定観念が音を立てて崩れていく快感がある。
都会の喧騒を忘れる空間設計:緒方慎一郎氏とスパイラル(青山)が紡ぐ美学
エレベーターを降りた瞬間から、儀式は始まっている。フロアの一角にひっそりと佇む櫻井焙茶研究所の空間を手がけたのは、株式会社SIMPLICITYを率いる緒方慎一郎氏だ。日本の伝統美を現代の生活様式へと翻訳し続ける緒方氏の手腕が、このわずか数坪の空間に凝縮されている。
カウンターには鈍い光を放つ金属板が敷かれ、奥には整然と並ぶ焙煎器具や茶壺。照明は手元だけを鋭く照らし出し、自然と茶司の指先へ視線が吸い寄せられる。古材の乾いた質感と工業的なマテリアルが調和し、どこか未来の実験室のような佇まいを見せる。スパイラル(青山)という現代アートの発信地にありながら、ここには千利休が茶室に持ち込んだ「市中の山居」の思想が、極めて今日的な形で息づいている。
櫻井真也氏が拓く「現代茶道」と進化する日本茶産業の未来
研究所の主である櫻井真也氏は、かつてバーテンダーや和菓子店「HIGASHIYA」のマネジメントを経て、この場所を立ち上げた異色の経歴を持つ。彼が提唱するのは、形骸化した作法に縛られることなく、茶の味、香り、色合いと真摯に向き合う「現代茶道」のあり方だ。
櫻井氏の視線は常に、過渡期を迎えている日本茶産業へと注がれている。国内の茶葉消費量が減少の一途をたどるなか、全国の熱心な生産者と直接手を取り合い、単一農園・単一品種のシングルオリジン茶が持つ繊細なテロワールを客の目の前で抽出していく。生産者の情熱を最後の一滴まで損なわずにグラスへと注ぎ込む橋渡し役。そのストイックな姿勢こそが、衰退を危惧される茶の未来に確かな光を投げかけている。
焙茶ブレンド・ロースティング体験に宿る自家焙煎の秘密と職人技
この店を唯一無二の存在にしている最大の要素が、店名にも刻まれた「焙茶」、すなわち焙じ茶への徹底したアプローチだ。客席のすぐ脇に設置された小型の焙煎機や焙烙(ほうろく)からは、香ばしい煙が絶え間なく立ちのぼる。
櫻井焙茶研究所では、客の好みに合わせて異なる茶葉や部位、焙煎深度をその場で調整する焙茶ブレンド・ロースティング体験が用意されている。同じ茎茶であっても、熱の加え方ひとつで若草のようなフレッシュさを残すか、ナッツのような重厚な香ばしさをまとうかが激変する。火と茶葉が対話するその数分間を目の当たりにすることで、私たちは普段何気なく飲んでいるお茶がいかに緻密な技術の結晶であるかを思い知らされる。
飲食・バー業界を震撼させた「ティーミクソロジー」と至高のティーペアリング
櫻井氏がもたらした最大の衝撃は、飲食・バー業界の垣根を軽々と飛び越えた「茶酒」のクリエイションだろう。単にカクテルにお茶の風味を足すのではない。茶葉そのものをジン、ウォッカ、ラムなどのスピリッツに直接漬け込み、真空低温抽出などの技法を用いて、茶の苦味、旨味、渋味をアルコールと完全に同化させる。
この研ぎ澄まされたティーミクソロジーは、国内外のトップバーテンダーたちに計り知れない刺激を与えた。例えば、濃厚な玉露のファーストドリップと高品質なクラフトジンの融合。そこに季節の和菓子を合わせるティーペアリングは、甘みと渋み、アルコールの余韻が口の中で幾重にも重なり合う驚異的な味覚体験を生み出す。酒を飲みに来る者も、茶を愛する者も、同じカウンターで等しく陶酔できる理由がここにある。
【2026年最新メニュー】五感を揺さぶる注目の茶葉と極上の日本茶カクテル
2026年の櫻井焙茶研究所は、素材の深度をさらに掘り下げた構成でゲストを迎えている。今シーズンの白眉は、発酵度合いを極限までコントロールした国産半発酵茶(烏龍茶)と、長期熟成の和ラムを掛け合わせたシグネチャーカクテルだ。グラスを傾けると、南国果実のような立ち香の奥から、焙煎香がじわりと追いかけてくる。
アルコールを嗜まない向きには、水出しのブレンド茶コースが進化を遂げている。氷水で十数時間かけて落とした希少品種の「露光」は、まるで出汁を飲んでいるかのようなアミノ酸の厚みに息を呑む。さらに、目の前で焙じられる炒りたて番茶のデモンストレーションは、仕上がりの香気成分がもっとも華やぐ温度でサーブされる。一瞬の香りを捉えるためだけに構築されたコースは、東京の美食シーンでも突出した純度を誇る。
食べログ高評価の裏側:知っておくべき予約の裏技と訪問のコツ
グルメサイト「食べログ」をはじめとする各レビューメディアで常に高評価を維持し続ける同店だが、席数はわずか8席ほどのカウンターに限られている。ふらりと立ち寄って座れる確率は極めて低い。確実にこの体験を味わうためには、いくつかの抑えておくべきポイントがある。
第一に、茶房の利用は事前予約が基本となる。公式のオンライン予約システムは毎月所定の日時に次月枠が解放されるが、特に週末や夕方以降の茶酒バータイムは争奪戦となるため、受付開始直後のアクセスが欠かせない。もし直前で席を探すなら、平日の13時台から15時台にかけてのエアポケットのような時間帯が狙い目だ。前日のキャンセル枠が突発的に戻るケースも少なくない。また、どうしても満席で入れない場合でも、併設のショップエリアでは焙煎したてのオリジナル茶葉を購入できる。自宅の急須でこの香りを再現するだけでも、立ち寄る価値は十二分にある。 (出典: sakurai japanese tea experience(Yahoo!ニュース))