この木なんの木の裏側!ハワイ名木の巨額維持費と名曲誕生の真相
この 木 なん の 木――テレビから流れてくるあの親しみやすいメロディを耳にしたことがない日本人は、おそらくほとんどいないだろう。南国の青空に大きく枝を広げる巨大なシルエットは、半世紀以上にわたって日曜日の夜やお茶の間の団らんに溶け込んできた。だが、あの巨木がどこにあり、なぜ今も私たちの心を惹きつけてやまないのか、その背景に隠されたドラマまで知る人は驚くほど少ない。
昭和から平成、そして令和の時代へと移り変わっても色褪せないこの 木 なん の 木という伝説のフレーズ。単なる企業のイメージ映像にとどまらず、日本人の集団的記憶に刻まれた文化的アイコンの現在地と、いま明かされる知られざる舞台裏を追った。
1. ハワイ・オアフ島に実在する巨樹「モンキーポッド」の現在地
あの木はCGでも絵画でもない。ハワイの乾いた風が吹き抜けるオアフ島ホノルル郊外、かつてのハワイ王族の私有地であった歴史ある公園「モアナルア・ガーデン」に、今も悠然と根を張っている。
植物としての正式な樹種名はモンキーポッド(学名:Samanea saman)。中南米原産のマメ科の熱帯高木だ。日が暮れると葉を閉じ、雨が降りそうになると葉をしぼませる習性から、現地では「レインツリー」とも呼ばれている。高さ約25メートル、枝張りの幅は実に40メートル以上。広げた枝葉が作り出す木陰の面積は、テニスコート数面分にも匹敵する圧倒的なスケールを誇る。
一時期は観光客の急増による踏圧で根が傷み、樹勢の衰退が危惧されたこともあった。しかし徹底した土壌改良と樹木医による細やかなメンテナンスによって、現在も力強く葉を繁らせている。現地を訪れると、心地よい風の音とともに、日本のテレビ画面越しに見ていたあの圧倒的な生命力が目の前に広がる。
2. 年間数千万円?日立グループが支払う驚きの維持費と独占契約
なぜハワイの一角にある民間公園の樹木が、日本の特定企業のシンボルであり続けられるのか。そこには、巨額の資金と戦略的なパートナーシップが存在する。
公園を所有・管理する地元財団に対し、株式会社日立製作所をはじめとする日立グループは、長年にわたり多額の協賛金および商業利用権料を支払い続けている。その額は年間数千万円規模(ドル建て契約のため為替により変動)に上り、公園の維持管理費や歴史的建造物の保全に充当されてきた。
2000年代半ば、公園の所有権移転に伴い莫大な権利金の値上げ要求や契約解除の危機が報じられたこともあった。しかし日立側は粘り強く交渉を重ね、世界的な独占撮影・商業利用の権利を維持。単なる広告ロケーションを超え、現地の文化財保護と地域貢献を両立させるCSR(企業の社会的責任)モデルとして、この巨額の投資は今なお継続されている。
3. 阿久悠と都倉俊一の黄金コンビが仕掛けたCMソング革命
あの軽快で覚えやすい楽曲は、どのようにして生まれたのか。時計の針を1973年まで巻き戻してみよう。
作詞を手がけたのは希代のヒットメーカー・阿久悠、作曲は数々の名曲を世に送り出した都倉俊一。当時、日本の高度経済成長期を牽引していた総合電機産業各社は、こぞって自社の技術力や製品名を前面に出したテレビ広告を打っていた。だが、阿久と都倉のコンビが選んだ手法は正反対だった。
「企業名を歌詞の中に一切入れない」
この前代未聞のコンセプトが、名曲誕生の起爆剤となった。「名前も知らない木ですから、名前も知らない花が咲くでしょう」という詩的な問いかけは、視聴者の好奇心を強烈に刺激した。巨大な木が持つ包容力と未来への可能性を重ね合わせ、結果として「あの木はどこの会社なのか」と人々に強烈な印象を植え付けたのだ。日本のCMソング史における最大の金字塔と呼ばれる所以がここにある。
4. 「日立の樹」と『世界・ふしぎ発見!』が築いた日曜夜の記憶
曲の正式タイトルは「日立の樹」。この楽曲がお茶の間に定着した最大の要因は、TBSテレビ系列で長年放送されたクイズ番組『日立 世界・ふしぎ発見!』の存在を抜きには語れない。
1986年の番組開始以来、一社提供番組のエンディングを飾るシンボルとして、日曜の夜(後に土曜の夜)に必ずあの木が映し出された。歴代の歌い手も時代に合わせて進化を遂げている。初代の朝コータローらに始まり、世代交代を重ねながら、2005年からは実力派アカペラグループのINSPi(インスピ)が担当。温かみのある重厚なコーラスワークが、デジタル時代を迎えた現代の視聴者にも新鮮な感動を与え続けた。
番組自体が歴史の幕を閉じた後も、あの映像と旋律がもたらす安心感は、世代を超えた共通言語として日本人の心に生き続けている。
5. 総合電機産業の激動を越えて:なぜあの木は残り続けるのか
日本の総合電機産業は、この数十年間で凄まじい構造改革に直面してきた。家電製品の熾烈な価格競争、事業の売却や再編、そしてITや社会インフラ、環境技術を軸としたDX(デジタルトランスフォーメーション)への急速なシフトである。
かつてのように「白物家電の日立」ではなくなった今、なぜグループはあの木を手放さないのか。その答えは、企業ブランドの根底にある「多様性と統合」の哲学にある。
無数の枝が四方八方に広がり、それぞれが独自の葉を茂らせながらも、根元は太い一本の幹で大地とつながっている。日立グループが手掛けるエネルギー、モビリティ、デジタルシステムなどの多角的な事業群を、これほど直感的に体現するシンボルは他に存在しない。変化の激しい時代だからこそ、変わらない大樹のイメージが企業への揺るぎない信頼感を生み出している。
6. 旅人を迎え続ける緑の巨人:モアナルアの風光
ホノルルのダニエル・K・イノウエ国際空港から車でわずか15分ほど。フリーウェイの喧騒から少し離れたモアナルア・ガーデンには、今日も穏やかな時間が流れている。
木陰に入ると、ハワイの強い日差しが遮られ、ひんやりとした涼風が肌をなでる。見上げれば、幾重にも重なり合う緑のグラデーションが空を覆い尽くす。かつてカメハメハ王家が愛したこの聖地で、巨木は何十年もの間、日本から訪れる無数の家族連れや旅人たちを静かに見守ってきた。
時代がどれほどデジタル化し、生活様式が激変しようとも、自然が放つ圧倒的な生命力と、名曲が紡いだあたたかな物語は色褪せない。オアフ島の丘の上で風に揺れるモンキーポッドは、今日もまた新しい葉を広げ、未来へ向けた確かな息吹を伝え続けている。 (出典: この 木 なん の 木(Yahoo!ニュース))