過激派から動画配信へ:中核派の知られざる組織実態と公安の攻防
中核 派 と は、日本の戦後史において数々の激しい武力闘争やテロ・ゲリラ事件を引き起こし、警察当局から「極左暴力集団」として厳重な監視下に置かれ続けている過激派組織、革命的共産主義者同盟全国委員会(中核派)の通称である。かつてヘルメットに角材、火炎瓶を手にして街頭を焼き尽くした過激な姿は、昭和の記憶とともに薄れ去ったように思われがちだ。だが、彼らは活動を止めたわけでも、解散したわけでもない。アジトの奥深くに潜みながら、時代に合わせてその装いを劇的に変化させている。
街頭での反戦デモやネット上の政治議論を眺めている際、ふと中核 派 と はどのような組織なのかと疑問を抱き、検索する若い世代が後を絶たない。動画配信プラットフォームでのポップな語り口や地方議会への進出といった「柔らかな表の顔」の裏側には、結成以来変わることのない武力革命への執念が息づいている。巧妙にカモフラージュされたその素顔と、治安当局との終わりのない暗闘を追った。
過激な暴力闘争から半世紀:新左翼の生い立ちと分裂の傷跡
中核派の歴史を紐解くには、1950年代後半から1960年代にかけて吹き荒れた新左翼運動の黎明期にまで遡る必要がある。既存の日本共産党の路線に反発した急進的な学生や労働者たちが結成した共産主義者同盟や革命的共産主義者同盟(革共同)がその源流だ。しかし、運動の内部では主導権争いや理論的対立が激化し、やがて組織は血で血を洗う分裂を繰り返すことになる。
1960年代初頭、組織は決定的な分裂を迎えた。理論的指導者であった本多延嘉を中心とする派閥が「中核派」を形成し、黒色ヘルメットをトレードマークとする「革マル派(革命的マルクス主義派)」と激しく対立。双方は「内ゲバ」と呼ばれる陰惨な殺し合いに突入した。白昼の路上での襲撃、鉄パイプやバールを用いた暗殺工作により、双方で100人以上の死者と数千人規模の負傷者を出すという、日本の治安史上に類を見ない異常事態へと発展していった。
さらに中核派は、成田空港建設反対を掲げた三里塚闘争や、羽田闘争、渋谷暴動事件などで警察官を殺害するなど、国家権力に対する武力闘争を先鋭化させた。火炎瓶や時限式発火装置を用いたテロ・ゲリラ事件は全国で相次ぎ、日本中を恐怖に陥れたのである。
最高指導者・清水丈夫の半世紀にわたる潜伏と突然の公然化
長きにわたり地下に潜行し、その生死すら謎に包まれていた最高指導者の動向が、組織の大きな転換点となった。議長である清水丈夫は、本多延嘉が革マル派によって暗殺された後、組織の頂点に立ち続けた人物である。警察の追跡を逃れるため、実に50年を超える半世紀もの間、徹底した地下潜伏生活を送っていた。
その清水が突如として公の場に姿を現した瞬間、公安関係者には衝撃が走った。東京都内で開催された集会に登壇した清水は、高齢となった白髪交じりの姿をさらし、自らの健在と指導体制をアピールしたのだ。長期間の潜伏を支えた秘密組織の防諜能力の高さを示すと同時に、組織が「非公然(地下)路線」から「公然化路線」への重心移動を図っていることを印象づける出来事だった。
だが、公然集会で演説する指導部の足元では、全日本学生自治会総連合(全学連)の活動家を中心とした若年層の確保が深刻な課題となっていた。若者の政治離れと過激派アレルギーが進む中、彼らは生き残りを懸けた新たな広報戦略へと舵を切ることになる。
「前進チャンネル」とABEMA出演:YouTubeを舞台にしたソフト路線の罠
過去の血塗られた歴史を知らないデジタルネイティブ世代に向けて、中核派が仕掛けた最大の武器が動画配信である。拠点である東京都江戸川区の「前進社」内部を公開し、若い活動家たちがユーモラスに語り合うYouTube番組「前進チャンネル」は、これまでの過激派のイメージを覆す試みとして話題を呼んだ。
番組では、活動家たちの日常、手作りの食事風景、アジト内部のルームツアーなど、一見すると一般的な若者向けVlogと見紛うコンテンツが配信されている。動画の端々には「反戦」「労働者の権利」といった耳当たりの良いスローガンが散りばめられ、暴力的な色彩は巧妙に隠蔽されているのが特徴だ。インターネット空間特有の親しみやすさを利用し、心理的ハードルを極限まで下げる戦略である。
さらに、活動家がABEMAなどのネット報道番組の討論コーナーに出演し、論客と舌戦を繰り広げる場面も増えた。こうした露出は、メディアリテラシーが未成熟な層に対して「少し過激だが筋の通った主張をする社会活動グループ」という誤った錯覚を与えるリスクを孕んでいる。既存の政治ジャーナリズムや、客観的なファクトを暴く政治ドキュメンタリーの手法を用いてその実態を検証しなければ、配信の裏にある危険な教義を見誤ることになる。
杉並区議・洞口朋子の台頭と地方議会への浸透戦略
メディア戦略と並行して彼らが注力しているのが、地方選挙を通じた公権力への足がかり作りだ。その象徴的存在となったのが、杉並区議会議員選挙で当選を果たした洞口朋子である。
洞口は全学連の活動家出身でありながら、過激派特有の威圧感を排し、地域に根差した保育・福祉問題や反戦平和を前面に掲げて無党派層や若者の票を取り込んだ。選挙期間中、中核派の機関紙「前進」や過激な武力闘争の歴史についてはほとんど触れず、生活者の代弁者としての顔を前面に押し出す手法をとった。
この地方議会への進出は、単なる議席獲得にとどまらない。公的な発言権や情報アクセスの手段を得るだけでなく、組織の「合法的な隠れ蓑」として機能させる狙いがあると公安関係者は指摘する。地方議会での地道な活動を通じて市民権を得ていくプロセスは、かつての暴力的な街頭闘争とは異なる、静かな浸透工作と言える。
警察庁警備局が警戒を解かない理由:武力革命思想と内ゲバの暗い影
ネット配信で笑顔を振りまき、選挙運動で頭を下げる活動家たちが増えたとしても、治安当局の視線は依然として冷徹だ。警察庁警備局は今なお中核派を「極左暴力集団」の筆頭格として位置づけ、厳重な監視と全国のアジトに対する家宅捜索を継続している。
警察当局が警戒を緩めない最大の理由は、中核派が「共産主義革命のためには武力行使も辞さない」とする基本綱領を公式に撤回していない点にある。表向きは合法的な政治・広報活動を行っているように見えても、組織内部には依然として身元を隠した非公然活動家が存在し、違法な情報収集や組織維持に従事しているとされる。
かつて敵対派閥や脱退者に対して容赦のない暴行・殺害を加えた内ゲバの体質や、目的のためには手段を選ばない革命至上主義は、組織のDNAとして温存されている。公安警察幹部は「表面的なソフト路線は資金と人員を集めるための手段に過ぎず、本質的な危険性は一切変わっていない」と警鐘を鳴らし続けている。
中核派とは何か?基本思想から2026年現在の組織実態と今後の行方
では、現代において中核派とはどのような存在として捉えるべきなのか。その基本思想は、マルクス・レーニン主義およびトロツキーの「世界革命論」に立脚した反帝国主義・反スターリン主義である。資本主義社会を根本から否定し、労働者階級の蜂起によって国家権力を打倒、プロレタリア独裁を経て共産主義社会を樹立することを目指している。
2026年現在における組織の実態は、極めていびつな二重構造を抱えている。上層部は70代から80代に達した昭和の過激派世代が支配し、実権と思想的正統性を握り続けている。一方で、現場の宣伝工作やSNS運用、選挙活動を担うのは、インターネットを通じて獲得された一握りの若年層だ。組織内部では深刻な高齢化と後継者不足が進行しており、従来の過激な暴力闘争を再燃させる実力は大幅に低下しているのが現実である。
しかし、社会的な格差拡大や国際秩序の動揺、戦争への不安などが高まる昨今、彼らが掲げる単純明快な「反権力」「反戦」のメッセージは、社会に不満を抱く層に対する一定の訴求力を持ち続けている。YouTubeやSNSという現代のツールを手に入れたことで、アジトに閉じこもっていた極左思想が、知らぬ間に一般市民の日常領域へと滑り込んでくるリスクはむしろ高まっている。
中核派の今後の行方は、彼らが「過去の遺物」として自然淘汰されるか、それとも巧妙な情報発信によって新たな支持基盤を築くかの分岐点にある。市民社会に求められているのは、表面的なパフォーマンスに惑わされることなく、その根底にある歴史的経緯と本質を冷静に見極める客観的な視線である。 (出典: 中核 派 と は(Yahoo!ニュース))