函館五島軒の伝統カレー探訪!名建築で味わう極上洋食のすべて
五島 軒 函館の重厚な扉を押し開けた瞬間、ふわりと鼻腔をくすぐるスパイスの芳香とクラシカルな空気感に圧倒される。港町特有の涼やかな風が吹き抜ける坂道に佇むこの洋食店は、単なる飲食店にとどまらない。明治から令和へと移ろう時代の荒波をくぐり抜け、街の記憶そのものを皿の上に描き続ける、生きた文化財だ。
異国情緒あふれる元町の風土とともに歩んできた五島 軒 函館のフロアでは、磨き抜かれた銀食器の触れ合う澄んだ音が心地よく響く。赤レンガの壁や落ち着いた調度品に囲まれてスプーンを口へ運べば、かつてハイカラな港町を彩った紳士淑女たちの賑わいまでもが鮮やかに蘇るようだ。
明治12年創業、若山惣太郎と五島英吉が灯した文明開化の味
物語の始まりは1879年(明治12年)に遡る。創業者である若山惣太郎が、ハリストス正教会の料理人であった五島英吉の腕を見込み、ロシア料理とパンの店を開いたのがそのルーツだ。屋号は五島英吉の卓越した技術と人柄に敬意を表して名付けられたという。
開港地として諸外国の文化が交錯していた函館市において、二人が目指したのは日本人の舌に寄り添う本格的な洋食の確立だった。度重なる大火や戦乱の危機を乗り越え、現在は株式会社五島軒として伝統を守りながら、函館の食文化の象徴として揺るぎない地位を築き上げている。
登録有形文化財の空間美!五島軒 本店 レストラン雪河亭の圧倒的な佇まい
十字街電停からゆるやかな坂を上ると姿を現す五島軒 本店 レストラン雪河亭は、昭和10年の函館大火後に再建された近代建築の傑作だ。堂々たる佇まいの本館は国の登録有形文化財に指定されており、足を踏み入れた瞬間に別世界へと誘われる。
格調高いアール・デコ調のレリーフ、柔らかな光を投げかけるシャンデリア、そして歴代の皇族や文豪を迎えてきたサロン。ここでは料理を味わう時間だけでなく、空間そのものを鑑賞する贅沢が約束されている。食事の前後に館内の資料館を巡り、函館の近代史と店の歩みに思いを馳せるのも通の楽しみ方だ。
門外不出のブイヨンが紡ぐ「イギリス風カレー」と王道洋食の真髄
看板メニューであるイギリス風カレーは、創業以来の知恵と技が凝縮された珠玉の逸品。丸6日間かけてじっくりと煮込まれる牛骨と香味野菜のブイヨンが、深いコクとまろやかな甘みを生み出す土台となっている。
一口含むと、まず広がるのはシルクのように滑らかな口当たりと野菜の芳醇な旨味。追って幾重にも重なるスパイスの刺激が心地よく立ち上がり、華やかな余韻を残して消えていく。効率化を重視する現代の飲食業界において、手間暇を惜しまず直火釜でルーを炒め続ける職人気質こそが、時代を超えて人々を魅了し続ける最大の理由だ。カニクリームコロッケやビーフシチューなど、手間を尽くした王道メニューの数々も色あせない輝きを放つ。
地元通が教える限定メニューと混雑回避の穴場時間
観光シーズンともなると店頭には長い行列ができるが、スマートに名店の味を堪能するためのポイントがある。狙い目は平日の14時以降、または夜の開店直後である17時台だ。ランチのピークを少し外すだけで、文化財の静謐な空気を心ゆくまで味わえる。
スマートフォンでGoogle マップの混雑状況をリアルタイムで確認しつつ、食べログなどの最新口コミで季節限定プレートや数量限定のプレミアムカレーの提供状況を把握しておくと失敗がない。本店でしか味わえない復刻メニューや、併設のショップで販売される限定スイーツのチェックも欠かせないポイントだ。
北海道観光のランドマークとして進化し続ける名店の矜持
食のトレンドが目まぐるしく変化する現代において、北海道観光のデスティネーションとして愛され続ける背景には、伝統への敬意と革新への飽くなき挑戦がある。レトルトカレーの開発による全国展開や、地元の厳選素材を活かした新メニューへのアプローチなど、老舗の歩みは常に前を向いている。
函館の風土が育んだハイカラな美意識を、ひと皿の料理を通して未来へと手渡していく。元町の坂の上に漂う香ばしい香りは、これからも旅人の記憶に特別な栞を挟み続けるに違いない。 (出典: 五島 軒 函館(Yahoo!ニュース))